夕暮れも近くなったとき、ヒル魔君に呼ばれた。
あの後、セナの胸をかりてひとしきり泣いたら
思ったよりもすっきりとしたから、遅ればせながらに皆に飲み物を配りに行った。
遅くなった私のことを、選手の皆は誰も責めたりしなくて。
ほっとして胸を撫で下ろした時、
あの悪魔が、
ヒル魔妖一だけが、
とても冷たい目で私を見ていたのを覚えている。
多分、しっかりとしたスケジュールをたてているだろう彼だから
そういった少しの誤差も許せないんだろうと素直に謝った。
ごめんね、といった私に、悪魔は一言だけ言って
またそそくさとグラウンドへ帰ってしまった。
意味わかんねぇ、と。
人が謝るのがそんなに不思議なことかしら。
そういう少し不可解な気持ちと、
人が謝っているのにその態度は何よ!
という不愉快な気持ちがない交ぜになった感覚で、彼の後姿を睨みつけた。
そうして、またいつものように練習が始まって。
セナは少しこちらを気にしていたけど、笑って手を振ると
安心したように微笑んで練習に戻っていった。
涙がおさまった時、心配するセナに向かって、精一杯微笑んだ。
そうして、今度は大丈夫よと、自分に言い聞かせながら。
「ごめんね、もう、平気よ。
私は大丈夫。」
そう言ってセナの手を握った。
不安そうに見つめる瞳に移る自分の笑みは
なんだか見本のようだったけれど。
私はいつもそうやって笑っているのだと、
どこかで分かっていたから、あまり気にならなかった。
その後、私が午後3回目の給水をしようとベンチから腰を上げたとき
ヒル魔君のあの少し高い声が、私の名を呼んだ。
「おい、糞マネ。ちょっと来い。」、と。
きっと呼び出した人がこの人でなければ
体育館裏なんていう少女漫画ではありがちな告白スポットにときめいていたかもしれないわ。
そう思いながら、絶対にそのようなことはありえない彼の、金色の髪を見た。
夕陽とまではいかないけれど傾きかけた日の光に、それはきらりと反射して、綺麗だと思える。
「ねぇ、何?今から給水の用意しなくちゃいけないんだけど。」
いつまでも何も言わない彼を、不審にも思いつつ苛立ちも覚えた。
私だって、暇なわけじゃないのよ。
そう心で悪態をつく。一年前の私じゃ、考えられないことだけど。
すると彼はちらりとこちらを見て、低く、声を発した。
けれどそれは、しばらく頭の中を巡っても、なかなか飲み込めないことで。
「お前、もう帰れ。」
分からない言葉だと。
私の知らない言葉だと。
そう思いたかったのに。
2度目に発した彼の声は
驚くほど私の心に
すとんと音をたてて、のしかかってきた。
今はもう、陽は夕陽へと変わっている。
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ちょっと変えました。微妙にですけれど。
ヒルまもらしくなってきたでしょうか?(汗
これからまたどシリアスに走りますが
見捨てないで読んでやってください。(ぺこり