いつも練習の後見上げる空は、星が輝いていた。
帰り道に星座を見つけてはなんだか幸福な気持ちになれた。
けれど今日は、星を見るにはあまりにも早すぎる。
まだ夕陽は存在証明を続けていて、夜も今は気弱だ。
暗い夜に、あの紅い日は敵みたいなものなのかしら。
一人ポツリと漏らした言葉も、風にのって消えた。
傍の平地で、まだ帰りたくないと訴える子供の声が聞こえる。
あの後、ヒル魔君の理不尽な申し込みに首を縦に振ることはできなかった。
「嫌です、何で帰らなきゃいけないのかしら。」
そう言って睨みつける私に、彼はさらに鋭い眼光を向けた。
今までに、見た事が無いような、冷たい目。
一瞬怯んだ私を見逃さず、彼は言った。
「部室でめそめそ泣かれたら士気が落ちんだよ。
泣きてぇなら家でオカアサマの胸の中で泣いてやがれ。」
吐き捨てるような、失望したと言わんばかりのような、
そんな声だと感じた。
涙がもうそこまでせりあがってくるのを、グッと押し込んで耐える。
泣くものか、今こんなことを言われたのに、泣いてやるものか。
何とか耐えて、耐えて、やっと口を開いた。
「言っていることは分かります、その点は私も重々反省します。
けど、その後の仕事に支障をきたした覚えはありません。」
はっきりとした口調で言い切ると、悪魔はまた面白くなさそうな顔で言う。
「てめぇが反省したかどうかじゃねぇんだよ。、第一もうすでに落ちてる奴が一人いんだろうが。」
その言葉にぐさりと音を立てて、ナイフが胸に切り込んだ。
この人が言っているのはセナだわ。
あの、優しすぎるセナのことだわ。
きりりと痛んだ胸に手をやる。視線が下がる。
確かに、それはそうなのだ。
この人が言っているのはあたっている。
鼓膜が破れそうな位大きくなり心音をどうにか抑えたくて
胸元に置いた手を硬く握る。
けれど悪魔はそんな私を暗闇に放り出そうと、容赦なく発した。
「今のお前は居ても意味ねぇ。とっとと帰れ、邪魔だ。」
その言葉を受けるには、私の心はその時脆すぎて。
涙も出なければ声も出なかった。
その後帰路に着くまで、どうやって支度したのか
どうやって校門を出たのか、曖昧にしか思い出せなかった。
ぼんやり思い出しているうちに空は藍色に染まってきていた。
小さく輝き始めた星たちは、まだ残る太陽に負けまいと
弱弱しいながら存在証明を始めていた。
私はどうすればいいのかしら。
ふと、自嘲するため息が漏れる。
明日も練習に行って、私は大丈夫なのかしら。
またヒル魔君に要らないと言われるかもしれないのに。
その考えが、とてもとても恐ろしいことだと気づいて
動けなくなった自分の身体をしゃがみこんで小さく丸めた。
ああ明日が来なければいいと。
生まれて初めてそう願った――――――・・・・。。
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いらないと言われるのが一番嫌だったのに言われちゃうまも姉。
ヒル魔さんは誤解はしてますがあてつけにそんなことしたんじゃなくて
本当にセナが集中してなかったから怒ってるんです。