小刻みにくる頭痛。
これは決してお前のせいじゃねぇ。
ただ単にイラついてるからだ。
てめぇのせいでこうなるわけがねぇ。
あいにくだが、今日は最高に体調がいいんだ。
だがムカつくことに。
今日は最高に機嫌が悪い。
糞マネが帰宅したのを確認して、練習に戻った。
ああまったく。
貴重な時間が18分と36秒も過ぎちまっただろうが。
ちっと舌打ちしてから銃を構える。
俺がいねぇと緊張感の欠片もねぇな。
そう思いながら、笑顔でパス練習をしてるサルへと狙いを定めた。
夕陽は、今まさに沈もうとしていた。
練習が終わりちらほらと部員が帰りはじめる。
パソコンに向き合っていた眼が、少し休めと訴えたが
軽く無視を貫く。
そんなことでいちいち休んでいられるか。
カタカタと無機質になるキーボードを打つと、背後から小さな声が聞こえた。
「あ、あの、ヒル魔さん、ちょっといいですか?」
おどおどと話すそいつを横目で一瞥しまた画面に眼を向ける。
「何の用だ糞チビ。」
低く呟くと瞬間沈黙がくる。
早く話しやがれ俺は時間の無駄遣いが嫌いなんだよこの糞チビが!
イライラしだした頭で、それでもなお黙っていると、やっとそいつは口を開いた。
「あの・・・まもり姉ちゃんは?」
その名が鼓膜を伝わって自分の身体を這いずり回るのを感じるまで
コンマ数秒もかからなかったに違いない。
ああ糞。嫌なもん思い出させるんじゃねぇよ。
心の中で後ろにいる怯えたそれに毒づいて、言う。
「強制送還。」
手短に発すると、また沈黙で返してきやがる。
今度はさっきよりも長い静寂で。
たっぷり15秒は置いてから、震える声が聞こえた。
「な、何で、ですか?まもり姉ちゃん、何かしたんですか・・・?」
何かした、だと?
鼻で笑いたくなるような台詞だ。
「部室で泣いてたろ。」
顔を向けるのも億劫なもんだから、微動だにせずに答える。
何があったかなんて、お前が一番知ってるんじゃねぇのか、糞チビ。
そうしてまたしんとした空気だけよこして、黙りこくる。
イライラが募る。
早くこの空間から消えろ。
キーボードを叩く力が強くなる。
そうして、限界まであと少しと思った矢先に、糞チビは言った。
「泣いてたから、なんだって言うんですか・・・。」
ああたくっ。本当に今日は、機嫌が悪くなることばっかりだ。
がたんと勢いよく立ち上がる。
糞チビへと向き直り睨みつけて言った。
「泣いてたから、てめぇの集中力が切れた。
泣いてたから、てめぇは今日の練習に身が入ってなかった。
それだけで、十分な理由だろうが。」
見下げてやると、口をポカンと開けたまま、ぼんやりとした間抜け面をしてる。
しばらくして、やっとそいつは口をきいた。
「僕の、せいですか・・・?
僕のせいで
まもり姉ちゃんを・・・・?」
ブチンという音が立つほどに。
本当に腹の底から苛立ちが湧きあがってくる。
これが何だかわからねぇが。
これが何だか、わかりたくもねぇが。
どうしようもなくどす黒い色をしているだろうことは、分かった。
「糞チビ。」
無感情な声で呼ぶ。
ビクンと震えた身体を抱えて、そっと伺うようにこちらを見る。
まるきり肉食獣と草食動物だな。
ふっと軽く笑って、そいつの逃げ道を両の手で囲って、封じる。
汗が伝うそれの顔を睨みつけながら。
低く唸るように、放つ。
「今日はこのままさっさと帰れ。
これ以上この問答続ける気なら
俺は躊躇い無く引き金を引く。」
青ざめたそいつの顔と。
赤黒く渦巻く俺の腹の中と。
浮かんできた女の泣き顔が。
ぐちゃぐちゃに混ざって
真っ黒になっていった――――――――――――・・・。
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ヒル魔さん本格的に嫉妬しだしました(笑
まもりとセナが互いに己のせいだとショックを受ける姿に
入っていけない空気を感じてムカムカ、みたいなのが書きたかったんです・・・。
そう思ってくだされば、いいな。(汗