「ヒル魔君?」
開けた部室の奥で、椅子に座って腕ぐむ彼に声をかける。
いつもこの時間ここに居ることは知っているから特に驚くこともないのだけれど
その彼が、今日に限ってうつむいていたものだから。
どこか具合が悪いのかと心配になったけれど、
ゆっくり上下する胸を見て、ああ寝ているんだと悟った。
音を立てないように、取りにきた他校のデータのファイルを取り出す。
そのまま去ろうとした時、彼の耳から黒いコードがのびている事に気がついた。
音楽聴いてるんだ。
少し興味がそそられた。
何を聞くんだろう、この人は。
きっとどこか外国の音楽なんだろうなと勝手に思ってみた。
片耳のイヤホンが外れて、机の上に転がっている。
ちょっとの罪悪感、そして多大な好奇心がそれを手に取った。
そっと耳に押し当てる。
流れてくる音楽は、予想した激しいものではなかった。
けれどロック調なのは確かで。
こんなの聞くんだ、と一人で感心に浸る。




あ、










この曲・・・。










どきんと心臓がはねる。
流れてくるその歌詞に頬が熱くなる。
ドキ、ドキと。
身体が、心がほんわりと温かくなる。


なんてことだろう。




この歌は。




悪魔が聴いているこの歌は。




























とんでもない純愛の歌。













かぁっと全身の血が回る。
思わず瞳を閉じて微笑んだ。
悪魔でも、愛の歌を聴くことがあるんだと、小さな驚きと喜びを噛締めて。
そう思った瞬間、耳から伝わってきていた音楽が、ぱっと消えた。
驚いて目を開けて振り返る。
横には、寝ていたはずの悪魔が面白そうに笑っていた。
「何人のモン勝手に聞いてるんですか、糞風紀委員様?」
ケケケと軽快に笑いイヤホンを掲げる。
そんな彼に、私は微笑んで言った。
「ヒル魔くんでも、そういう歌、聴くのね。」
とたん面白くなさそうに眉をひそめた。
そうして低く、何の話だ、と返す。
クスッと笑うと、それが不愉快だと言わんばかりにますます顔をしかめる。
そして立ち上がり、早々と部室を出て行こうとする彼の背に、言葉を浴びせた。

「ねぇ、ヒル魔くん。」


振り返る、彼。


その瞳を見つめて、言った。











「私、ヒル魔くんになら食べられてもかまわないわ。」











それを聞いた彼は











一瞬目を見開いてから











にやりと不敵に笑んでみせた。











「ほぉ、なら俺は





























 てめぇに俺の心臓を食らわしてやってもいい。」


























その台詞と共に、扉の向こうへ消えた彼の背中を見つめながら、



残されたMDウォークマンへと手を伸ばす。









聞こえた歌にまた、微笑んで。





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            これ、ある歌を題材に書きました。
            あまりエグくないように隠し隠し書いたんですが、本当の歌はもっと直接的です(笑
            興味がある人はまた聞いてくだされば言いますので。
            彼らなりの告白になればいいです。