横押しの扉をそっと開く。
お昼だし、日も照っているから暗くないはずの部室なのに。
なぜだかヒヤリとして落ち込んでいくように暗かった。

「まもり姉ちゃん・・・?」

声を発すると、途方も無く広い部屋で名を呼んでいるような錯覚に陥る。
ぞわりとした背中を誤魔化すように、両肩を抱えた。
もう一度声を上げようとした時、窓際にうずくまる彼女を見た。




その、あまりにもか細い身体が。



小刻みに、とても小さく、震えているのを。




「まもり姉ちゃんっ?!どうしたの??」




驚いて近づき肩に手をやる。
それは身近で感じると、思ったよりも大きく震えていたのに気づく。
彼女ははっとして顔を上げ、大きな瞳をさらに見開いた。




エメラルド色のその瞳は、



涙がうっすらと膜を張って



不謹慎にも綺麗に思ったけれど








僕はとても、悲しくなった。



「まもり姉ちゃん、どうしたの?何かあったの!?」

声を荒げた僕を見て、まもり姉ちゃんはきょとんとした顔をした。
まだ、事態把握ができていないようだった。
そのあと少しの間をおいて、ぱっと両の手で顔を覆い隠す。
そして彼女は震える声をばれないように、隠せてはいなかったが、早口で話した。

「な、なんでもないの、なんでもないのよ?やだ、違うの!
 さっき、虫が、虫がね、いたから、驚いちゃって・・・。」

あははと乾いた、彼女らしくない笑いが漏れる。
キリリと痛んだ胸の中で、いつも守られることしか出来なかった自分が頭をかすめる。



僕が、守らなくちゃ。


今度は僕が、まもり姉ちゃんを。


思うと身体はすぐに反応した。
未だ震える彼女の肩をそっと抱え、自分のほうへと引き寄せる。
ぽすんと収まったまもり姉ちゃんが、思っていたより小さくなったいることに驚いて。
優しく、出来るだけ優しく、背中をさする。

「・・・何か・・何かあったんなら、僕に言ってよ。頼りにならないかも、知れないけど。
 僕に出来ることなら、いくらだって、するから。」

いつも気丈で笑顔の姉が、今日は涙で身体を震わせている。
そのことでだいぶ混乱している頭だったけど、
落ち着けるように、出来るだけ安心することが出来るように、話す。
最初固まって動かなかったまもり姉ちゃんに、不安があったけど。
しばらくしたら、優しい大好きな彼女の声が、聞こえた。




「・・・ありがとう、セナ。


 大きく、なったね。」




それを最後に、彼女は声もあげず、泣いた。
それをなだめようにも、僕にはそんな術がないから。
ただただ黙って、泣き止むまで背をさするしか出来なかった。

僕たちは目の前のことでいっぱいいっぱいで。


その厚い、けれど世界を遮断するにはあまりにも薄い扉越しに


ヒル魔さんがいることなんて気づきもしなかった。




そしてそれが




今涙を流している彼女と




扉の向こうで空を仰ぐ彼の、歯車が動くことになるなんて







きっと誰にも分からなかった。






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            セナまもじゃないです。(笑
            なんかそんな感じになっちゃいましたが、二人は姉弟の関係ですから
            恋愛じゃない愛情があるんだよということで・・・。
            そしてヒル魔氏誤解すると、ね。(笑